キャンピングカーの検討雑記4 ~エンジン検討編~

キャンピングカー

キャンピングカー購入検討を開始し、ベース車両を選ぶために燃料(ガソリン/ディーゼル)、走行性能(出力/トルク)、駆動(2WD/4WD)、ボディータイプの順に検討を進めています。

前回はエンジン選定のための検討として、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンのランニングコスト面の比較を行いました。長期乗車をする前提だとランニングコスト面からディーゼル車が良さそうです。ディーゼルの方がランニングコストが良いのは最初から分かっていたのですが、問題はディーゼルの初期費用です。長期に愛着を持って乗ることが出来るのであればディーゼル。ちょっと試しにキャンピングカーに乗ってみようか、と言う様な感じであれば、初期費用の安いガソリンと言う感じです。私の貧乏性な性格的には乗れなくなるまで乗りつぶしたいとの想いがありますので、ディーゼルエンジンが性に合っていそうです。

しかし、コスト面だけでエンジンを選定するのも違う様な気もします。スポーツカーの場合はコスト面よりは、加速や力強さでエンジンを選ぶかと思います。高級乗用車の場合は静粛性と言ったファクターも入ってくるかと思います。トヨタが以前使っていたFun to Driveというコピーは運転する喜びをもたらす車と言った感じかと思いますが、キャンピングカーにとってのFun to Driveの為のエンジン選定基準は何になるのかをいろいろな視点で検討したいと思います。

今回は走行性能面での比較を行います。

走行性能比較

走行性能面に関しては、高回転時パワーに優れたガソリンエンジンと低回転時トルクに優れたディーゼルエンジンの比較になるかと思います。キャンピングカーは車体が重く、ビュンビュン飛ばすタイプの車でないことは確かです。しかし、高速道路での運転機会も多いと思われますので、高速道路時の運転性能もチェックする必要があります。

ディーゼルエンジンとガソリンエンジンの最高出力(パワー)と最大トルクは主要諸元表より確認する事が出来ます。

ディーゼル2.7L最大出力111(151)/3,600kW(PS)/r.p.m
 最大トルク300(30.6)/1,000~3,400N/m(kgf/m)/r.p.m
ガソリン2.7L最大出力118(160)/5,200kW(PS)/r.p.m
 最大トルク243(24.8)/4,000N/m(kgf/m)/r.p.m

トルクとは物体を回転させる力の事です。自動車の場合,物体とはタイヤの事です。つまり、トルクの値が大きいエンジンは大きな力でタイヤを回すことが出来ると言う事です。そして最大トルクの規定はエンジンの回転数と併せて規定されます。

上記主要諸元表でディーゼル2.7Lの場合の最大トルクは300(30.6)/1,000~3.400 N/m(kgf/m)/r.p.mと規定されています。数字の羅列とアルファベットの羅列の単位記号でなんのこっちゃと言う感じですが実は理にかなった表記の仕方です。

まず単位が何を示しているかと言うと、”/r.p.m”の部分ですが、r.p.mとはrotation per minuteの略で、1分間のタイヤの回転数を示します。つまり”/r.p.m”とは”1分間にタイヤが〇回まわった”時にと言う意味です。つまり/r.p.mの部分の数値が”/1,000~3,400”となっていますから、”1分間にタイヤが1,000回~3,400回まわった時に”と言う事です。

トルク自体の単位は”N/m”と”kgf/m”の2種類が併記されています。つまり、1分間にタイヤが1,000回~3,400回まわった時に最大トルクが300N/mあるいは30.6kgf/m発揮できるエンジンと言う事です。ここでまた訳の分からない単位”N”が出てきました。

”N”はニュートンと読みます。りんごが落ちるのを見て重力の法則を思いついたというイギリスの物理学者アイザックニュートンさんに因んだ単位です。これだけだとニュートンさんの体重と何か関係があるの?みたいな疑問を持つ人もいるかもしれませんが、ちょっと違います。ニュートンが発見した有名な法則は万有引力の法則です。これは重量があるもの同士は必ず2つの物体の間に働く力(重力)があると言う法則です。地球と言う重量のある物体と地球表面にある重量1kgの物体の間に働く力(重力)は約9.81Nとしています。なんで9.81と言う様な中途半端な数字なのかと言うと、ここでまさかのりんごが出てきます。りんごの標準的な重量は102gだそうです。今の日本では優秀な農家さんが多いので、ほとんどのりんごが102gより重いのですが、この単位が決められた当時のイギリスりんごの標準的な重さは102gだったそうで、1kg=1,000gを102gで割ると9.81となって、これが”N”のベースとなりました。つまり、りんご1個を地球が引っ張る力を1Nと規定したと言う事です。

ただ、リンゴの重さで重力を計るのに抵抗がある人がいたからかどうかは分かりませんが、もう一つの単位として”N”ではなく、”kgf”と言う単位も存在します。これは、1kgの物体に地球上で働く重量を1kgfとしています。こちらの方が私はしっくりきますね。”f”はForceの略で日本語だと1kg重と言っています。9.81N=1kgf=1kg重となります。現在の国際単位であるSI単位系では”N”が正式な単位であり、”kgf”は古いMKS単位系です。今の正式単位としては1Nが正式単位であり、1kgfは使用禁止となっています。

なんとなく”N”と”kgf”の単位の意味合いが分かりましたかね?もう少しでトルクの単位である”N/m”、”kgf/m”にたどり着きます。N/mあるいはkgf/mは1m当たりに1Nあるいは1kgfの力と言う事で、イメージとしては1mの棒があってその端っこに1Nあるいは1kgfの力を加えた時に、もう片方の端にかかるねじれの力と言う事です。実はトルクの単位としてはNmと言う表現もあります。こちらの方がSI単位系で正式に認められているトルクの単位の様です。基本的には1Nm=1N/mなのですが、1Nmと表現するときには、ある定点に1mの棒の片方を固定し、もう片方に1Nの力を加えた時に、定点の周りに働く力のモーメントを表します。モーメントとは運動量ですので、1N/mは静的な力の量、1Nmは動的な力と言う感じでしょうか。

ごちゃごちゃした説明で、混乱してしてしまったかもしれませんが、ここまでの説明をベースに数値を見ると数字の意味合いが若干わかりやすいのではないでしょうか?

ディーゼル2.7L最大トルク300(30.6)/1,000~3,400N/m(kgf/m)/r.p.m
ガソリン2.7L最大トルク243(24.8)/4,000N/m(kgf/m)/r.p.m

ディーゼル2.7Lエンジンの場合は、タイヤの回転数が1分間に1,000回~3,400回の時に最大トルク300Nあるいは30.6kgfのタイヤを回す為の力が発生すると言う事です。同様にガソリン2.7Lの場合は1分間に4.000回の時に最大トルク243N/mあるいは24.8kgf/mのタイヤを回す為の力が発生すると言う事です。

つまり、ディーゼル2.7Lエンジンは1,000~3,400回転と言う低い回転数の時に最大トルク300N/mを発揮でき、ガソリン2.7Lエンジンは4,000回転と言う比較的高い回転数の時に最大トルク243N/mのトルクを発生できると言っています。結果的にディーゼルは低速域で太いトルクを発揮できる性能となっています。

最大出力

次は最大出力です。出力とはトルクx回転数で表すことができ、ある重さのものをどれだけの時間で、どれだけの距離を動かしたかという仕事率を表す単位です。

ディーゼル2.7L最大出力111(151)/3,600kW(PS)/r.p.m
ガソリン2.7L最大出力118(160)/5,200kW(PS)/r.p.m

主要諸元表ではkWの単位とPSの単位で記載されています。kWは国際単位表記で、単位時間に使われるエネルギーの事です。仕事率とも言います。Wと言う単位は電力などを計る単位としてよく知られますが、蒸気機関を発明したジェームスワットさんに因んでいます。1Wとは1秒当たりのエネルギー(仕事)を表します。つまり、111kWとは1秒間に111kのエネルギーを発生すると言う事です。わかったようで、よくわかりませんね。

そこで、もう一つのPSと言う単位が出てきます。PSは馬力の事です。ドイツ語の馬の力Pferde Starkeから来ています。1馬力(PS)とは先ほど出てきたジェームスワットさんが考えた単位で、馬に荷物を引かせ、75kgのものを1秒で1m動かす力と定義付けました。こちらの方が何となくイメージわきやすいですよね。でも馬もいろいろな種類がいて、サラブレットもいれば道産子もいて、更にその中でも痩せている馬、太っている馬と言う形で千差万別ですので、単位としてはあまり優れたものではありません。なので、世界標準の単位としてはkWを使用しています。

上記主要諸元表でディーゼル2.7Lエンジンの場合の最大出力は111(151)/3,600 kW(PS)/r.p.mと規定されています。この意味は、1分間の回転数3,600の時に最大出力111kWあるいは151馬力の最大出力が発揮できるエンジンと言う事です。同様にガソリン2.7Lエンジンの場合は118(160)/5,200 kW(PS)/r.p.mとなっており、1分間の回転数5,200の時に最大出力118kWあるいは160PSの最大出力が発揮できるエンジンと言う事です。

つまり、ディーゼル2.7Lエンジンは3,600回転と言う比較的低い回転数の時に最大出力111kWが発揮でき、ガソリン2.7Lエンジンは5,200回転と言う比較的高い回転数の時に最大出力118kWの最大出力を発生できると言っています。

ディーゼルエンジンとガソリンエンジンの走行性能比較

数字の意味をしっかり把握して主要諸元表の最大出力、最大トルクを見ると、低回転域で力を発揮するディーゼルエンジンと高回転域で力を発揮するガソリンエンジンと言う対比がよくわかるかと思います。

スポーツに例えると、瞬発的な爆発力と力強いパワーが魅力なお相撲さんタイプがディーゼルエンジン、スピードに乗ってどんどん加速し、最高速を競う短距離ランナータイプがガソリンエンジンと言った感じでしょうか。

ディーゼルエンジンは低回転時に太いトルクが発揮できるため、キャンピングカーの重い車体を力強く動かす事に期待が出来ますが、高回転時は馬力が落ちる方向となる為、高速時の運転にはあまり向いていないと言う事がわかります。

逆にガソリンエンジンは高回転時に優れたパワーを発揮してくれるため、高速時の安定的な乗り心地が期待できます。しかし、トルクが細いため、坂道でのパワー不足は否めないでしょう。

まとめ

キャンピングカーとは言え、高速道路などで高速運転性能を重視する場合はガソリンエンジンが適しているようです。また、キャンピングカーはビュンビュンスピードを出す車では無いと割り切って、低速運転性能を重視する場合はディーゼルエンジンが適していそうです。

キャンピングカーに求めるものは人によって違うかと思いますが、今回の走行性能面検討では、私の基準では低速運転性能重視のディーゼルエンジンを選択したいと思います。やはりキャンピングカーの場合は、とにかく車重が重い為、Fun to Driveの視点は重い車でもストレスのない運転や、燃料に対するコストパフォーマンスの高さにプライオリティーを置く方が良いような気がします。

今私が乗っている車は小型乗用車の代表格であるガソリン車のホンダFitの1.5Lハイブリッドですが、その前はホンダオデッセイの2.3Lガソリン車、更にその前は三菱デリカの2.5Lディーゼルに乗っていました。デリカは重量が1.9t程度あり、非常に重い車でしたが、あまり運転にストレスを感じた覚えがありませんでした。でもその後オデッセイに乗り換えた後は坂道でのパワー不足を非常に感じた事を覚えています。オデッセイは1.6t程度の重量ですが、高速道路の坂道ではアクセルを最大に踏み込んでもなかなかスピードが出ず、やきもきした覚えが有ります。

こんな個人的な経験を持っているので、キャンピングカーの様な重い車はディーゼルの方が相性が良いはずと言うバイアスが私には働いているのですが、諸元表の数値面から客観的に比較してもやはり、キャンピングカーの場合はディーゼルエンジンの方が良いと感じました。

次回は用途面からの比較を行おうと思います。